セラミックス系の高温用熱電材料の研究をおこなっています。
高温超伝導体などの強相関系酸化物と熱電変換材料とは多くの共通点があります。
高集積熱電変換モジュールによる低密度廃熱回収システムの開発
地域新生コンソーシアム
石川県工業試験場
(La, R) - M - O 系酸化物
[ R = Ca, Sr, Ba;    M = Mn, Fe, Co, Ni ]
熱電変換には、ペルチェ効果を利用し電気を流して冷却する熱電冷却と、ゼーベック効果を利用する熱電発電があります。前者は1960年代に実用化が進み、今では精密な温度制御やワインクーラーの冷却など一般に普及しています。一方の熱電発電では、発電効率10%を超える素子の開発が進んでいますが、なかなか実用化の域にまで達していません。地球温暖化や化石燃料の枯渇化が叫ばれる中、熱電発電はスケール効果が無視でき低密度廃熱のエネルギー変換として期待できる技術です。
本プロジェクトは、「高集積熱電変換モジュールによる低密度廃熱回収システムの開発」というテーマで熱電発電の実用化を目指すものです。石川県工業試験場を中心に産学官の連携で、平成19年度には経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発事業(代表:佐々木)として、続く平成20年度には同一テーマの地域イノベーション創出研究開発事業(代表:水越)として研究開発が進められています。実用化には熱電性能や耐久性の向上と低コスト化が必須で、材料開発とともに、熱電モジュール作成にインプリント技術を新たに導入して素子のパッケージ化を展開しています。プロジェクト全体では、高温熱電発電用の酸化物材料の開発、低熱伝導率・高電気伝導率の製膜型熱電変換素子の開発、セラミック基板にインプリントする高集積熱電モジュールの製作、廃熱回収システムの開発、低密度廃熱利用の熱リサイクルの構築、という一連の研究開発が目標です。現在までに、5 cm角に最大612対のpp-n素子デバイスをスクリーン印刷し、素子の高集積化に成功しています(写真)。このデバイスは、熱応力による破壊に強く、膜厚10 mmから50 mmで膜厚方向に温度勾配を持っています。現在、このような素子開発と並行して、低密度廃熱回収システムの製作が進められています。
セラミックス熱電変換素子(右図)を612対印刷したインプリント熱電モジュール